『雨の日の心理学』は、支える力を静かに育てる実践書。心の傘の差し方を学びましょう。
今回の本のご紹介
今回は、著者:東畑 開人さんの『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』をご紹介いたします。
本書は、家庭や職場で「誰かをケアする側」になってしまった人たちのために、ケアの本質を実践的に教えてくれる一冊です。
この本の学びポイント
「ある日突然、妻が心を病んだら」
「部下が明らかに元気をなくしている」
「息子が登校拒否、でもどう声をかけたらいいか分からない」
そんな“心のケア”が必要になる「雨の日」は、誰にでも訪れます。こうなってしまったとき、あなたはすぐに相手をケアすることができますか?
そう、他人事として捉えるのではなく、いざというときの準備・心構えが必要なのです。雨はいつ降るかわからないんでね。
この本は、専門家ではないあなたが、そうした日々にどのような関わり方をすればよいかを5日間の授業形式で教えてくれます。
本記事では、
①雨の日のケアの難しさ
②「きく」と「おせっかい」2つの技術
③ケアをする人をケアする大切さ
こちらの3点をピックアップします。
この本の要点3選
1. 雨の日のケアの難しさ
「頑張ったね!」
そういった声掛けによるケア。あなたも経験があると思います。誰だってそういってもらえたら嬉しいものです。
そこまで難しい話ではないかと見られがちですが、上述のようなケアがうまくいくのは相手の心が晴れの日だから。
もし、パートナーがうつ状態、部下が適応障害、子どもが登校拒否、親の介護など。相手の心が不調でなんらかの心のケアが必要な場合、「頑張ったね!」と声掛けしたらどうでしょうか。
「自分のこと、なんもわかってない」「どうせお世辞に決まっている」ふだんは相手を元気にすることができる言葉でも、このように相手の心を傷つけてしまうのです。
晴れの日には正しいケアも、雨の日には間違いになることがある。
だから雨の日のケアって難しく、さらに困ったことに長期的なケアになることが多いのです。
2. 「きく」と「おっせかい」2つの技術
では雨の日のケアは具体的にどうすればよいのでしょうか。主に2つの技術をご紹介します。
まずは、「きく」。
話を聞いてもらうことで少し楽になる。こんな経験、何度もあると思います。
ただ、相手の心が雨の日の場合、きっとその人は誰のことも信じられなく、「話を聞いてもらったところで、なんの意味もない!」と思っています。
そんな雨の日の状態だからこそ、相手の話・思いををきくのです。そのことで、相手とつながりを築く。そう、「きく」は心のケアに大事な技術なのです。
そして、「おせっかい」。
「きく」は、心の内面の変化を目指すのに対し、「おっせかい」は環境の変化を目指します。ここでいうおせっかいとは、相手のニーズを満たすお手伝いのこと。
わかりやすいところを例にすると、体の心配をしてあげることです。ケアの相手が子どもの場合、体が休まるように、身の回りを清潔にしてあげて、食べられそうなご飯を作ってあげる。こういう環境を整えてあげることが心のケアになるのです。
3.ケアする人をケアする大切さ
ここまで雨の日のケアについて述べてきましたが、どうでしょうか。
一度、自分がケアをする側になった場合のことを想像してみてください。
・なかなか相手が反応してくれない
・今日は元気そうかな?と思ったら突然調子を崩す
・相手から嫌みを言われる
・相手のためにと労力を使う
ケアする側が、心身疲弊してしまいそうだと想像できます。
そうなんです。ケアするには、ケアする人が元気であることが不可欠なのです。
タフな毎日になります。相手の心の雨が自分自身の心にも移ることは大いに考えられます。
そのために大事なのは孤独にならないこと。一人で抱え込まず友人や同僚に相談する、またはケアの辛さを言えるような『捌け口』を持っておいてください。
実生活への応用
いつ身近な人の心が雨の日になるかわかりません。そうなるためにもこの本を参考にして来る日に備えておいて損はないです。
特に上述の2つの手助けについて具体的に学んで実践できるようにしておきたいです。
①「きく」
・相手の話を聞ける場をセッティングする
・沈黙を恐れず相手の言葉を待つ
・相手の話すペースに合わせる
・無理に答えを出そうとしない
・相手の話した内容でわからない箇所があれば「どういうことか、もうちょっと教えて」ときく
こちらですが、コーチングの技術に通ずるものがあります。こういった技術は雨の日に限らず、普段のケアでも大いに役立つのです。
なお、コーチングに関する書籍はこちらをご参照ください👇
著書『「承認 (アクノレッジ) 」が人を動かす コーチングのプロが教える相手を認め、行動変容をもたらす技術』
https://yuu-studyroom.com/2025-03-book/
②「おせっかい」
・食事や家事をしてあげる
・代わりに仕事をやってあげる
・モノをあげて解決を図る
・制度を紹介してあげる
・一緒になって手伝う
大事なことは相手に押し付けないこと。そして自分の無理のない範囲で行うことです。
頑張りすぎて、ケアする側が倒れてしまうのは避けましょう。
あとなんだかんだでお金があると解決できます。結局お金があれば、取れる選択肢が増えるのです。
まとめ
『雨の日の心理学』は、ケアする側の人々が自分自身の心を守りながら、他者を支えるための大切なポイントがたくさん詰まった一冊です。普段使いできる技術もたくさん紹介されています。相手を思いやることは雨の日に限った話ではないですからね。
もし相手に心の雨が降り出したとき、あなたはどのように傘を差しますか? いつ降りだすかわからない雨。この本を通じて、いざというときの傘の差し方の準備を進めてみてください。
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